パワーハラスメント

実例で解説!派遣社員同士のいじめもパワハラになるのでしょうか?

職場いじめはパワハラ?

同僚のいじめで抑うつ状態になった派遣社員のケース

大手家電メーカーで働く派遣社員Rさん(29歳、女性)は、東京都下のある支店でグループリーダーをまかされている。

このグループはRさんのほかに女性の派遣社員が5名いるが、Rさんは業務の遂行能力が高く、顧客にもきめ細かなサポートができることから、この支店に着任して8ヵ月後にグループリーダーをまかされることになった。

ところが、Rさんのグループメンバーが、Rさんの異例のグループリーダー抜擢をねたむようになった。

通常は1年半から2年たってからリーダーになるのに、8ヵ月でリーダーとなり、当然、給料もほかのメンバーよりも高くなった。

今までそのような待遇を受けた社員がいなかったこともあり、Rさんはほかのメンバーから目の敵にされるようになっていった。

メンバーのミスを指摘すると、その後、支店長に「Rさんの指導が厳しい」「Rさんは新商品について質問しても何も教えてくれないのに、お客様への対応でミスをすると嫌味を言う」など、Rさんの悪口を言った。

しかし、効果がないとみるや、今度はメンバー全員でRさんを無視するようになった。

Rさんがちょっとでも失敗すると、メンバー全員でその失敗談をやりとりし、「本当は能力もないくせにリーダーやっているのはだれだっけ?」などと中傷しながら、メンバー同士で目配せをして冷笑した。

ほかのグループのメンバーにも給湯室でRさんの悪口を言ってまわり、Rさんが近づくといっせいに無言で立ち去った。

業務で声をかけても目も合わせず、飲み会もこれ見よがしにRさん以外に声をかけて仲間外れにした。

Rさんは支店長にこの状況を相談したが、「これだから女同士はめんどうくさいんだよなあ。まあ、そのうち収まるだろうから、今は辛抱してよ」と言うばかりで何も改善せず、失望感を強めていった。

半年たったある日、Rさんは突然ひどいめまいに襲われて、会社に行くことができなくなってしまった。

受診すると「ストレスによる抑うつ状態」と言われ、1ヵ月休職するようにと言われた。

こんなことで倒れてしまう自分が不甲斐なく、Rさんはますます落ち込んでしまった。




同僚のいじめで抑うつ状態になった派遣社員のケースを解説

このケースのような出来事を、一般的には「職場いじめ、社内いじめ」と表現することが多いようですが、これもパワハラにあたると思われます。

現在のパワハラの定義には「職務上の地位または職場内の優位性を背景にして」という文言を盛り込んでいますが、これは「パワハラは上司から部下に対するものだけではなく、職場の中にあるあらゆるパワー(優位性)を使ったものはパワハラに含まれる」という意味を込めたものです。

では、このケースでは、職場のどんなパワーを使ったのでしょうか。それは「集団のパワー」です。

一般的に、職場のパワーでもっとも注目されるのは上司の持つ職権ですが、時に集団のパワーは上司の職権をも凌駕する力を発揮します。

実際に起こった事例としては、富士通京都支店職場いじめ事件です。

このケースと同様に、高給をねたまれた元女性社員が、複数の同僚女性から2年以上にわたりいじめを受けた結果、精神障がいを発症した例です(大阪地裁 平成20年(行ウ)第144号 平成22年6月23日判決)。

裁判では「集団で長期間、継続的に、陰湿で常軌を逸した悪質なひどい嫌がらせがあった」と認定し、「それによって被害者が受けた心理的負荷の程度は強度であると言わざるをえない」と、その深刻さを指摘しました。

また、「精神障がいの発症は、同僚のいじめと、それらに対して会社が防止措置をとらなかったため」として、業務との因果関係を認めて労災の支給が認められました。

人は孤独に弱い存在です。職場で無視されたり、人間関係を阻害されたりすると、心に大きな傷を受けてしまいます。

集団の力を使ったパワハラは、一見、些細なことのように見えますが、心の傷はたいへん深く、暴言や暴力に匹敵する人権侵害ということができるでしょう。

また、そのような状況をマネジャーとして放置すれば、当然、会社の責任も問われることになります。

部下が孤独に陥っていないか、部下の人間関係にも注意を払い、必要があれば改善することが求められます。