パワーハラスメント

実例で解説!パワハラになる暴言とはどのような言葉なのか

その暴言はパワハラです

パワハラになる暴言のケース「成績優秀な営業部長のパワハラ」

A部長は、大手精密機器メーカーに勤める47歳。入社以来ずっと営業畑で、現場の第一線で輝かしい成績を上げてきた。

営業成績は常にトップクラスで、ほかの同僚にくらべても出世は早く、40代前半ですでに部長職にあった。現在は首都圏の支店で法人営業部を統括している。

しかし、問題なのはA部長のパワハラである。以前から部下に厳しく当たる傾向はあったが、昨今の景気低迷で会社全体の業績が伸び悩んでからというもの、ますます厳しくなっている。

「なんでこの程度の数字しかあげられないんだよ! もうガソリン代がもったいないから動くな!」「お前らは会社を食い物にしてるんだよ! この給料泥棒!」などの発言は日常茶飯事で、部下はいつもA部長の顔色をうかがいながら、ピクピクして仕事をしている。

ただ、一方で、このような厳しい指導の成果なのか、A部長の部署はトップクラスの成績を維持しており、会社の売上に貢献している。

それだけに、役員をはじめ経営層には、「A部長のやり方にはたしかに問題はあるものの、成果をあげているので口出しはできない」という暗黙の了解があった。

そんなある日、入社6年目の男性社員Bさんが、突然、自殺してしまった。

Bさんはほかの人にくらべて仕事が遅く要領も悪かったこともあり、A部長も、特にBさんには、次のように厳しく当たっていた。

  • 「客先の回り方がわからないのか?」
  • 「勘弁してよ、そんなことまで言わなきゃいけないのかよ。お前、対人恐怖症だろ?」
  • 「お前の存在自体が目障りだ、消えろ!」
  • 「お前が使えないヤツだと会社中に言いふらすぞ」

その話を日ごろから耳にしていたBさんの妻が、ある日会社にやってきて「主人がこんなことになったのは、会社がA部長のパワハラを放置してきたからですよね。裁判で訴えます!」と、涙ながらに抗議してきた。

その場にいたA部長は、「パワハラなんてしていません。私だって業績を上げるために一生懸命で、そのために部下を叱咤激励してきただけです。悪気があってこういうことを言っていたのではありません」と弁解した。




パワハラになる暴言のケースの解説

このケースでは、パワハラと思われる昜冐が数多く登場しますが、これらの言葉は裁判ではどのように判断されているのでしょうか。

2007年に判決が出たいわゆる日研化学事件では、上記ケースに登場したような言葉が原因で、被害者が自殺をしてしまいました(東京地裁平成18年(行ウ)第143号 平成19年10月15日判決)。

遺族が起こした裁判の中で、被害者が下記の言動を受けていたことが明らかになりました。

  • 存在が目障りだ、いるだけでみんなが迷惑している、お前のカミさんの気が知れん、お願いだから消えてくれ
  • 車のガソリン代がもったいない
  • どこへ飛ばされようと俺は「お前は仕事しないヤッだ」と言いふらしたる
  • お前は会社を食い物にしている、給料泥棒
  • おまえは対人恐怖症やろ
  • お前はだれかがやってくれるだろうと思っているから、なんにもこたえていないし、顔色一つ変わってない
  • 病院(客先)の回り方がわからないのか。勘弁してよ。そんなことまで言わなきゃいけないの
  • 肩にフケがベターツとついている。お前、病気と違うか

これらの言動について「過度に厳しく、キャリアを否定し人格・存在自体を否定するものだ」と判断されました。

パワハラは「人格や尊厳を傷つける言動を繰り返し行うことで、被害者に身体的、精神的苦痛を与えること」が問題だとしています。

との裁判で指摘されたように、このような発言は部下指導には当たらず、まさに「パワハラに当たる昜言」と言えます。

また、裁判では、言葉の内容だけでなく、これらの発言をした上司には部下に対する「嫌悪の感情」があり、それが部下をさらに追い詰めたことを指摘しています。

また、上司本人はパワハラ(暴言)だという自覚がなくても、周囲の部下や同僚は『あの発言はひどい』と感じていた点も重要視され、「これらの言動が社会通念上、客観的に見て、精神障がいを発症させる程度の過重なものである」としています。

つまり、このケースで家族が裁判を起こした場合には、上司側がいくら「叱咤激励のつ一もり」と言っても、これらの言葉で部下が精神的に追い詰められ、うつ病になったり自殺を図ったりすれば、行為をした上司はもちろんのこと、それを知りながら成績が優秀であることに気をとられ、部下指導の問題点を適切に指導しなかった会社側の責任を問われることになるでしょう。