パワーハラスメント

パワハラとの誤解をうまないために心掛けることとは

パワハラ問題で押しつぶされる人

「パワハラ」を悪用してはいけない

パワハラという言葉が世の中で使われはじめたころ、被害者が「「自分が受けてきたことに名前がついたことで、対処できるようになりました」という言葉を聞くようになりました。

「これまで自分が受けてきた理不尽な言動を一言で表すことができず、周囲にも説明するのが難しかったし、体験を共有することもできなかった。

しかし、パワハラと言っただけで理解してもらえるようになり、共感を得やすくなった」といいます。

現象に名前がつくことで、その概念が一気に広がるというのは決して珍しいことではありません。

セクシュアルーハラスメント(セクハラ)も、これまで何かおかしい、不当だと感じていた言動に、「セクハラ」と名前がついたことで一気に問題とする世論が高まり、企業や組織内で対策が進んだのは記憶に新しいところではないでしょうか。

パワハラも同様に、その単語があっという間に広がりました。それは、潜在的にパワハラで苦しんでいた人が、大勢いたからではないでしょうか。

しかし、現在、その言葉が強い意味を持ち過ぎたために、先述したような「パワハラとは言えないことでもパワハラと訴える」という弊害が発生しています。

「正当な注意や叱責であっても、不快感を理由にパワハラだと申し立てる」「自らの努力や義務を果たさずに、評価が低いことをパワハラと言う」「気に入らない上司や同僚を異動させる、また白分か異動するための手段としてパワハラを使う」というような事例が生じているようです。

これは「パワハラという言葉を使うことで自分の思いどおりにしたい」という、「パワハラ」という言葉のセンセーショナルな一面を利用した、本来の問題とは違うものです。

一方、それに対応する担当者や上司も、「パワハラ」と言われることを恐れて、きちんとした注意や指導をすることを躊躇してしまう、または被害者の言い分に振り回されてしまうという状況が発生しています。

パワーハラスメントという言葉は、決して人を陥れたり、個人の利益のために利用する言葉ではありません。

また、教育・指導を妨げるものではなく、むしろしっかりと教育・指導をするために必要な知識ですが、その部分が理解されていないように感じます。




パワハラは上司や会社だけに問題があるのではない

それに加えて、研修の場面などでときどき見かけるのは、「パワハラ問題は私には関係ない」という態度をとっている人です。

「パワハラは、パワーを持つ立場からの一方的な攻撃がほとんどだから、その責任は上司や会社が負うべきだ」という考えが、そのような態度にさせているのではないかと思います。

しかし、パワハラはもともと、ほんの些細な感情の行き違いが原因になっていることがほとんどです。

なんらかの意図を持って攻撃をしてくる加害者ももちろん存在しますが、仕事の状況報告が遅れ、ミスも多く、攻撃的な言い方をしてくる部下にイライラを募らせ、パワハラ言動をしてしまうということが意外に多いのです。

パワハラは、コミュニケーション上の問題から発生することが多く、上司や会社にだけ問題があるものとは言い切れません。

もちろん、行き過ぎた指導や叱責、人権を無視した発言は絶対に許されません。上司にはそのような発言をしないことに配慮する必要もありますし、それを防止する義務も会社にはあります。

でも、職場でいい人間関係を築いていくのは、ほかならぬ職場のメンバー一人ひとりなのです。

時折、パワハラ相談窓口に、「私か上司に言いにくいことを、そちらでかわりに伝えてくれませんか」と言ってくる方がいるそうです。

自分は被害者と決め込んで何もせずに、「自分にとって快適な人間関係までも、ほかのだれかが整えてくれるものだ」という意識がどこかにあるのでしょう。

しかし、快適な職場は、自らつくり上げなければ、世界中のどこを探しても存在しないのです。

自分が求める快適な職場にするためには、受け身ではなく、上司に言いにくいことも自分で言ってみる、どうすれば快適かつ活気のある職場になるか考えて行動してみる、上司が自分に何を求めているのかを聞いてみる、そのような一人ひとりの働きかけが、パワハラ問題を発生させないために必要です。

職場のメンバー一人ひとりがいきいきと能力を発揮するために、適切なパワーによって職場の秩序が保たれていることは大切なことです。

個人個人が自分の好き勝手なことを要求したり、それを満たしてもらえないからといって上司や会社に不満をぶつけたりするのは、単なるわがままに過ぎません。

企業や組織内の共通の目標に向かって、お互いに刺激を受けながら、自分の成長と組織の成長を目指すには、部下指導は必要不可欠な要素です。

それを理解させるためにも、なんでもかんでも「パワハラだ!」と言ってくる部下に対して、「それはパワハラではない」理由をきちんと説明し、指導することが上司の大切な仕事になります。

もそも何かパワハラに当たるのかを理解しないで言っている部下に対して、びくびくする必要はありません。

上司がパワハラについてしっかりと理解をすることで、自信を持って部下指導に当たっていただきたいのです。

パワハラヘの誤った認識が新たなパワハラ問題を生まないためにも、パワハラとは何かを理解する機会を持っていただきたいと思います。