パワーハラスメント

パワハラの実態と影響力とはどのようなものか知っていますか?

パワーハラスメント

パワハラと思われてしまう言動とは

実際に、職場ではどんな言動がパワハラだと認識されているのでしょうか。

働く人々がどのような言動をパワハラと感じ、またどの程度、職場にパワハラがあるのか、そしてどのような影響があるかなどの実態調査の結果を見てみましょう。

この調査では、パワハラの実態を調べるために、次の項目を質問しています。

  • どんな言動をパワハラとして認識するか、
  • パワハラに当たる言動を自分が受けたことがあるか、
  • パワハラに当たる言動が現在の職場に存在するか、

あわせて、パワハラに該当する言動をどのように感じているかについて質問しています。

また、仕事や職場の状況について、安心して働けているかどうかなどのチェックもしています。

パワハラと感じる言動のタイプと受け取り方

パワハラと感じる言動

どのような言動をパワハラと感じるのかについては、分析の結果大きく分けて五つのグループができました。

①能力否定

  • 「あほ、バカ、出来が悪い」などとバカにされること
  • ミスや成績不良をみなの前で、大声で叱られるようなこと
  • ミスや成績不良をねちねちと叱られるようなこと
  • 嫌味を言われること

これらの言動を受けると、能力を否定されたと感じて自信を失ってしまいます。

②無視

  • 自分だけが情報を与えられないこと
  • 仕事を与えられない、または具体的な指示がされないこと
  • あいさつしない、口をきかないなど無視されること
  • 普通では達成できないほどの仕事を与えられること

これらの行為は、自分の存在そのものを否定されたと感じます。

③脅迫

  • 机をたたく、書類を投げるなど脅されるようなこと
  • 「辞めろ、お前はいらない」などと退職を促すようなこと
  • 「言うことをきかないなら……」などと、暗に脅かすようなこと
  • 胸ぐらをつかむ、こずく、けとばされるようなこと

これらの言動があれば、部下は萎縮して十分な能力を発揮できません。

④個の侵害

  • 歳や性別などで差別的な言い方や扱いをされること
  • 学歴や容姿などを取り上げて笑いものにされること
  • 私生活に干渉されること
  • 宴会や旅行への参加を強要されること
  • 使い走りなど上司の使用をさせられること

これらは、「人として自分が大切にされていない」という不快感につながる言動です。

⑤権利否認

  • 少しの休憩時間も取れないこと
  • 休暇や早退などの制度利用を許可してくれないこと
  • 仕事をこなすために必要な教育を受けられないこと
  • 説明もないままに、突然仕事が変更されること
  • 権限がないのに責任を問われること

このように、働くものの権利を認めない行為は、それを認めなかった理由や背景をきちんと説明しないと、部下はパワハラと感じてしまいます。




パワハラ言動をどのように感じるのか

上記の言動を受けた場合の心身への悪影響について、実態調査の結果を分析すると大きく3つに分類されていました。

圧迫感

  • イライラや焦りの気持ちがある
  • 精神的につらく、苦しい
  • 上司や周りからのプレッシャーがある
  • 職場にいるとストレスを感じるなど

虚無感

  • 仕事にやりがいがない
  • 仕事を辞めたい
  • 自分は無力、無価値だと感じるなど

不当感

  • 正しく評価されていない
  • 自分の能力が十分に発揮できていない
  • 自由に意見を言うことができないなど

職場の状況によって、パワハラ言動はどのように認識されるのか

仕事や職場について、現在どのような状況であるかを、以下の二つの視点があります。

「支援関係がある状態かどうか」

  • 安心して働ける雰囲気があるか
  • 自分のことはよく理解されているか
  • 失敗や弱点を率直に話すことができるか
  • 困ったときに相談するなど信頼できる人がいるか

これらの支援関係がある環境の職場は、自分の存在が容認され、お互い支え合っています。

支援関係があれば、たとえ上司から叱責されてもグチをこぼせるので、ダメージも少なくなります。

【自己決定感があるか】

  • 自分のペースで仕事ができるか
  • 自分の仕事を計画し、コントロールできるか
  • 目標は明確で合意の上で決定しているか
  • 自分たちのやるべきことと経営戦略・方針が合致しているか

これらの項目が当てはまる職場は、メンバーが組織目標に自ら合意し、一人ひとりが主体的に仕事をしている実感を持っている状態です。上司の厳しい指導も自分のためだと思い、がんばることができます。




だれがパワハラを感じやすいのか

調査の結果は以下の通りです。

女性の方がパワハラと感じやすい

「自分の職場にパワ「ラがあるかどうか」というパワハラの認知については、男性よりも女性の認知度が高く、同じ言動であっても女性の方がパワハラと感じやすい傾向がありました。

中でも、「脅迫」や「個の侵害」に当たる行為をパワハラだと強く認識しています。

男性や管理職はパワハラを受けた経験が多い

パワハラを受けた経験については、女性にくらべて男性が高い結果となっています。

特に、「能力否定」「脅迫」に当たる言動は、男性の多くが経験しており、女性の「能力否定」「脅迫」にくらべて大きな差があります。

同様の傾向が管理職にも見られます。つまり、この調査では、女性は男性よりも、もろもろの言動をパワハラと感じやすいのですが、実際にパワハラにあった経験は少ないという結果でした。

パワハラ経験の有無にかかわらず、パワハラのある職場には悪影響がある

パワハラによる心身への影響との相関を見ると、パワハラの認知・経験と影響度との相関は低いものでしたが、パワハラの存在と影響度との相関は高いことがわかりました。

これは、パワハラをたとえ自分自身が受けていなくても、職場にパワハラが存在すること自体が、職場になんらかの悪影響を与えるということを示しています。

パワハラ問題を個人間の問題としてだけではなく、「組織に悪影響を与える問題」としてとらえることが必要だということを示しています。




支援と自己決定感

同様に職場状況を示す「支援」と「自己決定感」について、パワハラ経験や存在の有無との関連性については次の通りです。

まず、支援と職場パワハラの存在の関係について、能力否定というパワハラは「ない」と回答した人達は、職場に支援関係が「ある」と認識しています。

また、自己決定感についても同様の傾向があり、職場に「パワハラあり」と回答した人は、それぞれ「自己決定感を持って仕事をしている」という回答が低く、反対に「パワハラなし」と回答した人では、自己決定感を持って仕事をしているという回答が高い、という結果です。

パワハラの存在は周囲へも悪影響を与える

これらの調査結果から、過去や現在にパワハラの経験があろうとなかろうと、パワハラが存在する職場では、部下が圧迫感や虚無感、不当感を覚えていることがわかります。

また、大声で怒鳴ったり、人格攻撃を受けたりすることは、女性へのダメージがより大きく、自分自身が被害を受けていなくても、周りの人が怒鳴られたりするだけで心理的に悪影響を受けやすいと言えます。

一方で、そのような行為が職場であったとしても、「だれかに相談できる」など支援関係があったり、「自分の仕事を自分で進めている」といった自分の裁量で仕事を進めたりしている人は、パワハラの心身への悪影響を低く抑えることができます。

これらのことから、職場からパワハラのダメージをなくしていくためのヒントとして、一つは困ったときに相談できるような信頼関係や、失敗や弱点を率直に話すことができるような組織内の「相互支援関係を強化していく」ことがあげられます。

二つ目には、部下への仕事の与え方について、上司との間で目標を明確にして合意の上で決定したりヽ部下自身に仕事を計画・コントロールさせて、部下に「自己決定感」を持たせるようにすることも重要だと言えます。